昇段レポート≪呉 治邦≫


このたび初段昇段審査を受審させて頂き、誠に有り難うございました。このような機会を与えて下さった市川雅也師範をはじめ、恩師である山本隆史先生、諸先生、諸先輩そして道場生の皆さんに対して、厚く御礼申し上げます。
振り返りますと、三十八才の秋に入門させて頂いてから十一年が経ちました。末っ子が小学生に入学したのをきっかけに、武道を通じて自分自身を心身両面から鍛え直したいと思い、当時、山本隆史先生がご指導されていた道場に入門させて頂いたのがはじまりです。以来、年数だけは長いのですが仕事の関係で稽古に参加できないことも多く、内容は甚だ心許ない限りです。また、正直なところ、辛く厳しい稽古に足が遠のいた時期もありました。そんな不甲斐ない自分に対して、山本先生からはいつも励ましの言葉をかけて頂き、困難に立ち向かうこと、あきらめないことの大切さを教えて下さいました。あらためて心から感謝申し上げます。
昇段審査では、基本、移動、型その他どれをとっても満足できる内容ではありませんでしたが、とりわけ十人組手について、自らの修行不足を痛感させられる結果となりました。昨秋の五人組手の苦しい経験から自分なりに覚悟して、減量、摂生、とともに走り込みなどのスタミナ強化にも取り組んだつもりでおりましたが、実際の十人組手は予想をはるかに超える過酷なものでした。普段、道場で教わっていることが何もできません。どころか、三人目を終えた頃には完全に息が上がってしまい、対戦相手の攻撃を受け続けるなかで意識が朦朧となっていくのが分かるほどでした。それでも皆さんの温かい声援に支えられて、何とか最後まで立っていることができたものの、自分自身の未熟さを思い知らされる審査となりました。しかし、これが現在の自分の偽らざる実力であると厳しく反省し課題をもって日々の稽古を続けていきたいと思います。
ここに至るまで、人の何倍もの時間がかかりました。その間、年々体力が衰えていくとともに、家庭や仕事において様々な変化が起きたことにより、空手を続けるのが困難な状況にも何度か直面しました。しかし、今となっては諦めないでよかったとつくづく思っています。あきらめたらそこで終わりですが、あきらめない限り何度でもやり直すことができます。これを機に、もう一度初心に戻って稽古に励みたいと思います。まだまだ分不相応ではありますが、初段という帯に恥じないよう、真の黒帯に少しでも近づけるよう、心身の鍛錬を怠らず精進していく所存です。引き続き御指導よろしくお願い申し上げます。押忍。